滋賀1区(自民党) 大岡敏孝(おおおか としたか)
2011.10.28 (金)

君子「危うきTPP」に近寄らず

最近、TPPに参加するのか不参加なのかが、だいぶ国会で議論されるようになったので、地元で聞かれることも多くなってきました。そこで、すこし私の考えをまとめておきたいと思います。

いろいろ勉強してみて、結論から言うと、いまの状況では「TPPには参加すべきではない」と思っています。

しかしその前に、分かりやすくするために、TPPと切り離して市場のあり方について申し上げたいと思います。
私は原則的には市場開放、市場拡大をすべきだと考えています。理由は大きく二つあって、①日本の技術や商品は、農林水産業を含めてかなり高度であり、競争力が高いと考えている事、②全世界で市場のブロック化が進んでおり、日本は孤立主義になるべきではない事です。

特に2点目に関しては、かつて日本が第二次大戦に突入せざるを得なくなった最大の理由です。戦争に突入した当時の日本は、欧米列強から経済封鎖を敷かれ、窮鼠となってしまっており、それなりの理由があったと思っています。一方で、問題はその前の10年間に、そういう状況にならないように外交で立ちまわれなかったという反省があります。つまり、国際政治の世界は、その時点時点の判断に至るまでが大事、プロセスの段階でシナリオが決まってしまうというものだと、理解する必要があります。

そういう点からも、今回のプロセスは大切です。

その上でTPPについて申し上げると、今回の議論では、「日本の工業製品の輸出が進むのではないか」ということと、「外国の農水産物が大量に入ってくるのではないか」という2点のバランスというか、どっちを取るかの議論ばかりなのが、きわめて残念です。

この点についてはテレビや新聞などでもやっているので、簡単でいいかと思うのですが、「輸出は大して増えない⇒TPPの主なマーケットであるアメリカの関税は安いし、現地生産も進んでいる」「農産品は、原料用途以外はあまり増えない⇒日本人の味と鮮度、安全性に対する意識は高い」と思っています。

私はそれ以外の市場分野について、関心と警戒感を持っています。

一つは金融です。金融技術はアメリカに比べて日本は遅れており、訴訟大国のアメリカと同じ仕組みになったら、外資に食いつくされてしまうと懸念しています。金融機関は現在、特に銀行などは十分な納税をしていません。私は外形課税をさらに強めて、金融機関の税金を上げてでも、外資が入ってきにくい障壁を作ってもいいと思っています。日本の金融機関にしても、税金をたくさん納めることで外資の参入規制になるなら、合意が取れるのではないでしょうか。

二つ目は医療分野です。世界で最先端の医療を誇る日本が、市場開放を迫られた時・・・今の医療レベルがどうなるのか、薬品の価格や品質保証がどうなるのか、外国人医師や医療目的の来日に対しどう対応するのか、マイナスの影響が懸念されます。市場開放という視点から、市民の健康や安心を脅かすわけにはいきませんので、反対です。

三つ目は労働の分野です。どういうわけか・・・労働組合の代表である連合はTPPに賛成を表明しています。TPPに参加すると労働市場も開放されると言う事を知らないのでしょうか?
外国から労働者がたくさん流入してくる事は、日本では浜松が一番経験しています。それでも全人口の1割にも満たない数字です。労働市場が開放されたら、単なる労働力だけでなく、雇用者賃金や年金制度や福利厚生分野まで広く影響される事が予想されるので、日本人にとってはマイナスだと考えます。

さらには、現時点では参加するとかしないとか言っている最後の国が日本だとされているようですが、今後このTPPに中国が入ってきたらどうするつもりでしょうか?
当然、同じ条件で中国に対しても市場開放する事になります。そうすると、今の条件そのものが崩れるわけですが、それでも途中離脱というわけにはいかなくなるでしょう。今後どうなるのか想定しながら、10年、20年後も見据えながら、外交問題は取り組んでいかなければなりません。これは、第二次大戦に至り、日本が敗戦してしまった最大の反省点でもあります。

一方で、全世界規模で市場のブロック化が進もうとしています。例えばヨーロッパは、市場はもとより通貨まで統合しました。また、アジアの覇権を目指しつつ、アフリカに触手を伸ばしている中国の動きも警戒しなければなりません。そうすると、日本とアメリカの同盟関係を含めて、ある一定地域の市場の確保とイニシアティブの確保が絶対に必要です。

そういう重要な政治判断、外交戦略を推進するのが・・・今の民主党政権というのも不安要素です。こういう問題は、何をやるのかという条件を議論したところで、「誰がやるのか」次第で良くもなったり悪くもなるものです。これは、料理と一緒です。一流の料理人が作る絶品の料理も、材料は家庭の食材と似たようなものだったりします。プロの料理人が作るのか、思いつきでシロウトの家庭科教室の生徒が作るのか、実はその点が一番重要だったりします。

残念ながら、いまの政権が交渉につくとすると・・・とても強力なリーダーシップを発揮できると思えないし、手練手管の交渉が出来ると思えないので、「君子危うきに近寄らず」が正解ではないでしょうか。

コメント1件

  1. - 鈴木洋平

    何だか日本中がいきなりTPPという議論になっていますが、日本が市場開放の道を探るなら、どこか日本にとって有利になる国とEPAを結べば済むことのような気がします。
    日本とEPAを結ぶ国が増加することにより、日本国内の体制も整いTPPでも何でも参加できる土壌になるような気がします。
    EUが一番代表的ですが、何だか世界中が自由化、市場開放などキレイな言葉を使ってブロック経済を築いている状態です。
    EUは結果としてある国の信用不安から混乱状態、結果、日本もとばっちりを受ける状態になっています。
    以前は資本主義と共産主義、どっちにする?というような議論でしたが、今や世界がもう一つ別の次元にいるようです。
    そもそも資本主義経済、自由主義経済という思想をどういう方向に持っていくのか、私たち一人ひとり真剣に考えないといけないと、最近、危機感をもっています。

    2011年10月29日
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