滋賀1区(自民党) 大岡敏孝(おおおか としたか)
2013.04.01 (月)

父の死

先日、父を亡くしました。69歳でした。

父は戦時中の昭和18年に生まれ、まさに戦後の復興、高度経済成長とともに人生を歩んできました。まっすぐで責任感が強く、仕事熱心な父親で、高校を卒業してゴルフ場を運営する会社に入社し、28歳で支配人となり、67歳で引退するまでゴルフ場の経営一筋に働いていました。現場主義のたたきあげで、私が子供のころ仕事場に遊びに行くと、よく長靴をはいてブルドーザーに乗っているのを見ました。おそらく自分の思い通りにコースを改修していたのでしょう。

また、父としては、大きくて、怖くて、一家の中心としての安定感に満ちた家長でした。私も物心がつき、社会人になってからは、父の大きな背中を追いかけて、社会のリーダーになりたいと政治の世界を志しました。地盤もないのに27歳で市議選に挑戦したり、また31歳で勝算もない中で市長選挙に出て落選したり、40歳で静岡県議を途中辞職して、国替えをして衆議院選に挑戦したりと、普通の人から見れば「無謀なのか、勇気があるのか、わからん。」と思われるような挑戦をしてきました。しかしこれも、私の心の中に、早く父に追い付きたい、なんとかして父に認めてもらいたいという思いがありました。そのために、自分を奮い立たせてド根性を出して、挑戦を続けてきたのだと思います。

そんな父が、4年前に骨髄異形成症候群という病にかかりました。これは、骨髄が病気になり、血液を正しく作れなくなる病気、いわば血液のがんで、少しずつ少しずつ、体中に酸素を運ぶ力と、バイ菌に抵抗する力がなくなってゆく病気です。昨年までは定期的な輸血と医療用酸素ボンベで乗り切ってきたのですが、昨年暮れから体調を崩して入院し、私が衆議院選挙を戦っている間も、父は大津日赤病院で肺炎と戦っていました。看護師さんには「息子が大きな相手と必死で戦っているのに、親父がこの程度の肺炎で死ぬわけにいかない。」と言っていたらしく、投票日を迎えるころには奇跡的に肺炎を克服し、年末には退院して家に帰ることができました。お正月に実家に帰った時には、私の当選を本当に喜んでいて、「男には人生のうちに何回か大一番の勝負がある。ここが勝負の時だ、と見極めて行動する力と、その勝負で勝ちきる勝負根性が必要だ。最初は心配したが・・・お前はよくやった。」と、めずらしく褒めてくれて、私も心底うれしかったのを覚えています。

ところがまた、家にいたのもつかの間、2月に肺炎にかかり入院しました。このときもひどく症状が悪化し、私も何度も見舞いに行きましたが、「見舞いになんか来るな。とにかくお前は仕事に専念しろ!」としか言いません。その後危ない状況になったのですが、なんとか気力で乗り切って克服し、もうすぐ退院となったときに、また別の耐性菌に感染してしまったのです。連戦でボロボロになっていた父の体には、三度目の戦いを勝ち抜く力は残っておらず、3月6日に力尽きました。

父が粘り強く、病気と最後の戦いをしているさ中に、私も朝一番の新幹線で駆けつけることができました。母と私たち三人の子供が集まって、父の最期を看取りました。父は最期まで、母のことを心配し、子供たちのことを心配し、家長としての威厳に満ちた姿のまま、亡くなりました。

私は長男なので、喪主を務めることとなりました。亡くなったのは水曜日でした。父の人生はゴルフ場とともにあったので、もし父と話ができれば、おそらく「三月の土日はゴルフ場が忙しい。葬式は金曜日までに終わらせて、ゴルフ場関係者に迷惑をかけるな。」と言うであろうと思い、JA甲賀さんに無理を言って、大急ぎで葬儀の手配をお願いしました。父や私がお世話になっていたにもかかわらず、あわただしくて十分なお知らせができず、失礼があったことと存じますが、どうかお許しいただければと思います。

私にとって、父は大きな存在でした。反発心と向上心の入り混じったような感覚をエネルギーに変えて、父の背中を追いかけてきました。亡くなってそろそろひと月になるのですが、なにか今でも病院にいるような気がします。そして、病気と戦いながら、私に期待と心配と、簡単に息子を認めるわけにいかないという父らしい尊厳に満ちた姿勢で、私の奮起や活躍を願っている、そんな父が今でもいるような気がします。

正直言って、目標というよりライバルを失ったような、意地を張り合う相手を失ったような、心にポカンとした感じがあります。49日を過ぎて、自分なりに父の死を消化し、本当の意味で理解し飲み込めるようになったら、もう一度父から教わったこと、父とともに過ごしたことを思い出して、奮起したいと思っています。いつかきっと、父を追い越してやる、こんな気持ちを失わずに、挑戦し続ける自分でありたいと思っています。

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