滋賀1区(自民党) 大岡敏孝(おおおか としたか)
2017.09.20 (水)

インド訪問

先日、インドにおけるODAの目玉案件である新幹線の起工式と、私の出身企業であるスズキの新工場の開所式のために、インド・アーメダバードを訪問してきました。
インドは日本にとって、過去もこれからも非常に重要なパートナーです。今から70年前、日本が第二次世界大戦に敗れ、まさに四面楚歌になっていた時に支えてくれたのはインドでした。パール判事が戦勝国による事後的・一方的な裁判を批判したことは有名ですが(これは、日本に戦争責任がないといったわけではなく、正論を通したということです。あしからず)、日本に対する賠償賦課を最初に放棄してくれたのはインドです。その後、第一次大戦の巨額賠償がナチスの台頭を生んだという分析から、戦勝国が次々と賠償放棄を決める流れとなりました。もし賠償放棄がなかったら・・・戦後当分の間は、日本人が頑張っても頑張っても賠償に持っていかれて、戦後の復興は大幅に遅れたかもしれません。今のような先進国の日本はなかったかもしれません。
さらにさかのぼっても、インドは仏教の発祥の地であり、西遊記で夏目雅子さんがガンダーラを目指して旅をする話はみんな知っていますね。滋賀県には比叡山、三井寺、石山寺など歴史のある寺社仏閣が多く、色黒のお坊さん(当時、遠くインドから招いていた)が中心になって式典を行う様子が残っています。日本人の心根に深く息づいている仏教とその関連文化は、例えば琵琶湖の名前(琵琶)もインドのビナ(という楽器)からきていますし、七福神も日本人はえびす様だけで、弁天様も大黒様もインド人のようです。
そんな心のふるさとであるインドで、日本との関係をさらに深くする事業が数多く立ち上がっていることに、強い因縁を感じながら訪問し、要人との会談もさせていただきました。アーメダバートの街は歓迎ムード一色で、いろいろ考えてくれたのだと思いますが、不思議な鳥居までお目見えしていました。
まず新幹線は、まさに日本とインドの関係を示すフラッグシッププロジェクトとして、何としても成功させなければなりません。政府はもとより、JR東日本、建設企業の皆様と協力し、インド国民に喜んでもらえる事業としたいと思います。式典ではモディ首相、起点と終点の各州知事につづいて安倍総理からも祝辞があり、日本とインドを特別な二国間関係として、経済発展や地域平和のためにやってゆく趣旨の発言がありました。
そして、スズキの新工場は、インド政府からも大きな期待がかけられており、安倍総理、モディ首相のお二人から祝福のメッセージがありました。ここはメイクインインディアとエクスポートフロムインディアという二つの政府方針に沿ったもので、インド国内のみならず、インド製の車を世界に向けて輸出するとのことです。
インドは、産業構造として製造業が非常に弱く、これが長年問題となっていました。サービス業のみでは雇用も外貨獲得も不十分だからです。当面は、資本収支は赤字となりますが、それを貿易収支でカバーする形で経済運営を進める戦略のようです。そこに、35年にわたってインドの自動車産業を引っ張ってきたスズキが協力するというもので、国を挙げた期待を感じました。
スズキの鈴木修会長によると、品質についても日本製に追いつきつつあるということで、これからのインド製造業の発展が楽しみになります。
一方で、課題もたくさんあります。一つは電力です。今回のグジャラート州は電力が安定していることが強みの一つですが、国全体で見ると非常に脆弱です。電力がないと、産業面はおろか、生活面、衛生面でも環境が劣悪となり、子供たちの死亡率も下がりません。にほんの最高の技術で協力して、電力のサポートをする必要があります。もうひとつはインフラです。道路はひどい状態で、これではいくら最新鋭の工場を作っても、そこへの資材の搬入や、製品の搬出で不具合が生じます。広い国土に、日本のようなレベルの高い道路を敷き詰めることは不可能です。維持管理で国がつぶれてしまうでしょう。だとすると、物流面を高度化・効率化する高速の鉄道貨物を整備しなければなりません。
インドを訪ね、現場を見て、いろいろな方のお話を聞くと、本当に政治がやらなければならないことがいっぱいで、わくわくしますね。成熟国家である日本では感じられない感覚で、少しうらやましいと思いました。
あわせて、先ほど書いた電力も、鉄道も、道路も、通信も、農業も、ものづくりも、日本のあらゆる分野にチャンスがあります。インド人はみな、日本の技術や人材にあこがれ、期待しています。我が国の政治も、経済も、少し内側を見すぎてきました。外には大きなチャンスが広がっている、日本に対する魅力やあこがれも一定程度浸透している、そのチャンスを多くの国民や企業がつかみ取れるよう、これからも政策を進めてゆきたいと考えています。

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