パラリンピックと戦争
北京パラリンピックが始まりました。冬のパラリンピックも、寒い中日本人アスリートが頑張っていることに、多くの勇気をいただきます。特にパラリンピックは、道具の進歩によって、病気や事故で失ってしまった機能を補って、アスリートの力を引き出している点においても、機械好きの私としては感動を覚えます。
そういう点では、同じく私がこれからのスポーツの形として応援している「eスポーツ」も、いろいろな意見はあると思いますが、ぜひ多くの皆様に認めていただき、普及させたいと思っています。eスポーツが最も優れている点は、パラリンピックで使っている「機械」ではなく、パソコンやゲームコンソールなどの電子機器によって、どんな障害、どんなハンディがある人でも、健常者と同じ土俵でスポーツができることです。さまざまな操作機器(インターフェイス)を使えば、パラリンピックにチャレンジすらできない重い障害を持っている人でも、障がい者どうし、あるいは健常者を相手にも競技が可能です。また、遠くにいても、コストの点で遠征などが出来なくても、あるいは国の問題、社会の問題で練習場や試合会場が整備できなくても、世界中いろんな国の人々と競技ができます。私はこの最高のユニバーサルデザインである点に、eスポーツの魅力を感じています。
いま、eスポーツの「e」と「井伊(いい)」をからめて、井伊家ゆかりの地である「彦根」「高崎」そして新たに「浜松」で、eスポーツの拠点づくりが始まろうとしています。「ダジャレ」をきっかけに、「歴史学習」と「世界的なユニバーサルスポーツ」という、あまり見たことのない「新結合」を実現していただきたいと思っています。私も全力で応援してゆきます。
さて、ロシアがウクライナに侵攻した件ですが、私は「パラリンピックが始まれば、停戦合意がされるのではないか」という淡い期待を持っていたのですが、残念ながらプーチン大統領はそんなに甘い人物ではありませんでした。私たちから見たら、今の日本の常識からしたら、まさに狂気なんですが、たった80年前の世界の常識なら、あんなもんなんでしょう。かつてイギリス、アメリカやフランスがナチスドイツに寛大・及び腰であったことが、ナチスドイツの拡大を生み、多くの犠牲者を出した大戦に至ってしまったこと、同じ歴史を繰り返してはならないと思います。日本は毅然とした態度で立ち向かい、ロシアがウクライナから兵を引くまでアクセルを緩めずに取り組む必要があります。
欧米は民間企業の動きも迅速です。さまざまな経済制裁、経済封鎖や資本・技術の引き揚げを企業主導で決断しています。その点、日本の企業は弱いのではないか、との意見があります。確かに多くの日本企業は決断に時間がかかるので、欧米よりも遅く感じるかもしれませんが、多くの日本の経営者はステークホルダー全体の丁寧な意思決定が重要だと考えているので、着実に根回ししロシアを封じ込める動きを始めているものと思います。歴史に学んでも、今回のロシアの件で甘い対応をするわけにいきません。それぞれの分野が連携して、ロシアがウクライナから兵を引くまで徹底して取り組みたいと思います。
一方で、こうした時にふと考えるのは、日本だとしばしば、芸能人やお笑いの人、あるいは有名経営者やスポーツ選手が政治的発言をすると、つまり政権の政策を批判したり、あるいは野党の動きを批判すると、一部のマスコミやSNSなどから叩かれることがあります。私はこうした一部マスコミやSNSは、良くないと思います。芸能人であろうと、経済人であろうと、スポーツ選手であろうと、相手が政府・与党だろうと野党だろうと、ある一定の根拠をもって論じることは妨げてはならないと思います。むしろ、よく聞く耳を持つべきです。もちろんフェイクや、誤った情報をもとに論じることもあるでしょう。それは、専門家ではないので仕方ない面もあり、むしろ専門家である私たちが正すべきは正し、正確な情報をもとに議論するように諭せばよいと思っています。
五箇条の御誓文で言われた、「万機公論に決すべし」は、民主主義の基礎です。私も国会議員になって10年になりますが、国会で、あるいは党内で、さまざまなテーマについて深い議論がなされているか、というと、残念ながらそうは言えません。一過性の報道をもとに追及のみが行われていたり、過去の発言を持ち出したりしてモノを言えなくしたり、そうしたことは広く議論し最適の答えを探す作業を妨げているだけです。マスコミや企業に対しても、「それは御社の統一見解なんですか?」なんて言ったら、もう担当者は発言できなくなります。まるで独裁者が支配する組織かのように、上から下まで同じ意見を求めることは、議論を封殺することだと戒めなければなりません。私たちは国民に代わって議論をするために、国民から選んでいただいている、ということを肝に銘じて活動します。
追加
日本国内でも、ネット上やいくつかの実際の場所で、ロシア人を罵倒したり、排斥する発言がされているとのこと。これは分かっていてもはっきり言わなければなりませんが、ほとんどすべてのロシア人には罪はありません。まして、日本で暮らしているロシア人には何の罪もありません。プーチン政権が考えを変え、ウクライナから兵を引けば済むことなのです。そのためには残念ながら、今まで通りの対応では、プーチン政権は侵攻を止めません。各国が歩調を合わせて防衛協力なり経済制裁をしないと、プーチン政権の行動変化のきっかけを作れないから、いたしかたなくやっていることです。私は話せばわかると信じています。対話の努力を重ねることです。うまくいっているかどうかはわかりませんが、フランスのマクロン大統領はじめ各国首脳は対話の努力をしています。私個人には十分な力はありませんが、様々なルートを使って、プーチン政権の行動変化を促す努力を重ねたいと思います。