国民目線と政治家目線
原子力発電所は相変わらず危機的な状況ですが、被災者の生活支援は徐々に充実に向かっているようです。
静岡県でも現地本部を設営して、知事が直接被災者に物資を配布しました。こういう市民目線で現場主義なのが、川勝知事の良さですね。
一方で、政治家はそういう「市民目線」「国民目線」だけでは務まりません。常に一歩先、二歩先を読んで、手を打っていくという「政治家目線」が必要です。
しばらく菅総理の顔を見ないので、一部のマスコミはずいぶんと批判していますが、私は「復興庁」をはじめ今後の構想を練っているのだろう、専門家や有識者を集め今後の進め方を聞いているのだろうと思っていました。これは最高責任者には非常に重要な仕事で、代理のきかない独占的な仕事です。アナウンスは官房長官や各大臣に任せておけばよいのです。
しかし・・・出てきたのが「町ごとなくなった漁村は、平地を国が買い上げて、全員が山の中腹に移住してはどうか」という、まるで子供の意見でした。
漁村は漁をするための町です。それがみんな山の中腹に住んで、どうするのでしょうか?また平地を国が買い上げて、何にするんでしょうか?公園?役場?人の住んでいないところに、そんなものは必要ありません。
しかも、費用が莫大になるでしょう。スーパー堤防の数倍の予算が必要になります。
私は、今回の地震で鉄筋コンクリートの建物は流されなかったので、今の建築技術なら、地震地域・津波地域の近代的な漁村のビジョンを出せると思います。
道を広くとり、高層化して、1階から3階までは駐車場、4階以上を住居とするような、今の技術とデザインによる優れたものを提案できるはずです。またそれは、復興支援として、実力のあるデザイナーに支援・応援でやってもらえばよいのです。
漁村は、漁村として発展するほうがいいと思います。そのためには、常に港の近くで海風を感じながら生活するほうがいいのです。そして、私たちに最高の魚を届けることが、おそらくその地域の人たちの最高の喜びだと思います。
一刻も早く町を再生して、またたくさん最高の魚をとって、しっかり稼いで家のローンを払うのが、理想的な復興の在り方です。
そういうビジョンを描き、国民に示すのが本来の「政治家目線」だと思います。
今はテレビを見ても新聞を見ても、大変な状況の報道ばかりですが、これらはすべて「今」を映しているだけです。政治家の目は、片方は今を、もう片方は未来を見なければなりません。今は「保護、保護」「支援、支援」ですが、いつまでも、5年も10年も保護を続けられるでしょうか?
政治家目線として、できるだけ早く保護の期間を終了し、彼らがもう一度職を手にし、働いて稼ぐための支援に切り替えてゆく「手順」「道順」を示す必要があります。
この点からも、静岡県には、とりわけ浜松市には大きな可能性を秘めていると思います。
かつては産業地域として日本中から注目されました。いまは雇用吸収力も、新産業の創業力も失っていますが、これらを再生すれば、きっと復興支援のモデル地域になると信じています。
多くの人たちはもう一度漁村に戻ってゆくでしょう。もちろんこれが最優先です。
しかし、一部には漁村に戻ることを断念する人もいるでしょう。あるいは、今回の原子力災害で戻ることすらできなくなる地域が出るかもしれません。
そうした方々に仕事を提供し、新しい家庭を構え、新生活をやり直すには、地域の経済力が必要です。東京のように事務職に偏った経済力ではなく、農林水産業や商工業がバランス良く存在している経済力が必要なのです。
また、静岡県では農商工連携も強化しますし、来年度からはスポーツ産業の誘致・育成も進めます。この中には、漁師からも転向できるようなマリンスポーツ、スポーツフィッシングも含まれています。
私も、半分の視野では今の課題をどう見て、どう解決するかを考えながら、もう片方の視野では一歩も二歩も先を見て、将来に向けた政策の布石をしっかりと打ってゆきたいと思います。
あわせて、それを実行・実現するための皆さまからの応援をお願い申し上げます。