産業停滞を避けられるか
昨日、半導体メーカーに勤める私の友人と話をしました。
私も知らなかったのですが、半導体のラインというのは立ち上げに20時間ほどかかって、それから一気にずーっと作り続けるのだそうです。その間に少しでも電圧低下すると品質が崩れてしまって、使い物にならなくなるのだとか。
そういう特性だから、一番困るのは今行われている「輪番停電」なんですね。これをやられると、ラインを動かせないんだそうです。しかも、予定通りやってみたり、やると言ったのにやらなかったり。政府も東京電力も、いったいどういう考えなのか、いつまでこのようなことをやるのか、はっきりと教えてほしいと困惑していました。
報道によると、今年の夏には大幅に電力不足になるため、今以上の制限が必要とのこと。そうなると、産業への影響は避けられないものとなります。
政治が道路を作るとか、公民館を作るとか、子供手当てをばら撒くとか、そういうのは所詮予算付けの問題です。つまり、税収の中から予算を配分するだけのことで、乱暴に言えば、子供でもできる仕事です。
しかし、経済・産業政策、成長戦略となると、そうは行きません。予算をつければすむ問題ではないのです。しかも、今回は電力の供給量に制限がある。この問題にどういう答えを出すかというのは、政治の力量が問われる問題です。
おそらく今と同じような、政策性もなく、ただ単にかわりばんこに停電するというやり方では、間違いなく産業の停滞を生みます。あらゆる製品に使われている半導体が製造できなくなれば多大な影響が出るばかりか、戦略性のない停電ではすべての産業が影響を受け、日本経済は急降下することになります。
また、経済・産業には「相手がいる」ことを忘れてはなりません。半導体はおそらくあっという間に韓国のサムスンあたりにシェアを奪われ、二度と立ち上がれなくなるかもしれません。
電力に制限があり、激しい競合が行われている中で、どうやって産業規模を維持し、どう日本の優位性を維持してゆくのか、こういう課題に直面すると、政権の実力が問われるのです。
しかも・・・「やってみたけど、今の政権では無理でした。ごめんなさい。」では済みません。やり直しがきかない局面ですから、日本が立ち直れなくなってからでは遅いのです。おそらく多くの有権者が、こうした事態になってはじめて、選挙の重要性、どの政治家に託すのかということの重要性を痛感しているのではないでしょうか?
政権選択というまやかし、つまり、「二者択一のどちらにしますか?」という質問をぶつけることで、政治家個人の力量を問われない、人物の力、人間力を問われない、ムードに任せた選挙をやってきたツケなのかもしれません。
私は、産業向け電力は安定供給し、その分、個人の家や遊園地、パチンコ屋さんなどの遊戯関係などは輪番停電などで対応するべきだと考えます。国民の生活を守るということは、その生活を支えている仕事を守るということ、産業の競争力を維持するということです。仕事がなくなったら、国民の生活は守れません。
さらに言うと、今回の大地震から復興するにあたり、最大の障害になるのが経済の失速です。逆に、復興の最大の力になるのは、経済が成長することです。
平時なら「お手並み拝見」といえるのですが、今回はそういうわけには行きません。
「そのとき歴史は動いた」の「その時」のように、この瞬間の決断にすべてがかかっています。
福島第一原発と同じような、後手後手の対応になってはなりません。
あらゆる英知・人材を集め、ド真剣に議論し、全身全霊のすべての力を振り絞って対策を決断していただきたいと思います。