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烏合の衆

昨日県庁にでて、いろんな話をしてきました。

その中でも今後の課題として重要なのが、「被災地では他県や他市町村からの応援が多数来ているが、烏合の衆になっている」ということです。

もちろん、能力がないわけでもなく、やる気のない職員を派遣しているわけではありません。
むしろ、それぞれの県や市を代表して向かっているので、若手のエース級を投入しているのです。

それがなぜ烏合の衆になってしまうのでしょうか。
それは、受け入れ側の市町村が壊滅していたり、受け入れの訓練もシミュレーションもしていないからです。多くの優秀な職員が、十分な仕事も与えられず、物資が大量にどんどん送られてくるのでその倉庫整理をしたり、被災地や避難所を視察して時間を潰しているのが実態です。

本来はこういう時に、県が先頭に立って応援受け入れのコーディネートと、他市町村の職員に対する権限委譲を進めなければなりません。そんなことは、当然これまでの行政慣習にはありません。しかし今は有事ですので、こういうことを県や知事という政治責任者が決めてゆかないと、結果として多くの被災者が死亡したり苦難を受けたりすることになってしまうのです。

岩手県の場合では、私は岩手県が十分な役割を果たしていない事が、現場の混乱をさらに増加させているとみています。現に、私が現地入りした日、つまり震災後40日が経過していたのですが、その時に岩手県から出てきた資料は、「各市町村で死亡や行方不明などでこれだけの欠員が出ていますので、それを補充すべく他県や他市町村からの長期的支援をいただきたい。なお、静岡県や浜松市の支援は、今回の岩手県のスキームにのっとった支援ではなく、独自の短期的支援なので、対象外とする。」という趣旨のものでした。

一体何を考えているんだ!と怒れましたし、同時に40日たって、出てきた資料がこのレベルか、ということに唖然としました。県が全く機能していないんですね。

しかも、欠員分を補充すると言うのは、平時の話です。通常業務だけやっていればいいのなら、それで間に合うでしょう。しかし、今は有事です。欠員補充で足りるわけがない。むしろ、現場の市町村に残った職員はできるだけ多く被災対策に回すべきです。そのためにも、十分な数の応援依頼をし、権限委譲をし、通常業務は応援部隊で回せるようにしてもいいと考えます。地元・現場を知る人間が、できるだけ被災者の中に入り、避難所を回し、捜索し、仮設住宅建設などの対応をすべきなんです。しかし今の岩手県の対応では、「ではいったい誰が被災対策・復興支援をやるんだ?」ということになってしまいます。

静岡県や浜松市の部隊は、「役に立つ押しかけ女房」を目指して、自分たちで勝手にどんどん支援を進めています。しかしそれが岩手県などからすると、管理しにくいんでしょうね。しかも動きが速いから、相対的に岩手県の動きが遅いと言うことになってしまう。これが面白くないんだと思います。

こういうことこそ、「最も官僚的なイヤな部分」ですね。これを打破しなければなりません。
私は、「脱官僚」ではなく、「活官僚」を目指しています。優秀で仕事が大好きな役人をたくさん知っており、彼らを存分に活用する事こそ、地域の力を高めることだと信じています。
以上のように、岩手県はひどい状態ですが、そんなことは気にもかけず、静岡県としてはやるべき事を粛々とやる。頼まれなくても、煙たがられても、岩手県民のため、国民のために「役に立つ押しかけ女房」を、徹底してやってゆきたいと思います。いずれ必ず地域の方々は理解し、感謝してくださると確信しています。

同時に、今回の東北入りで、いろんな事が分かりました。
静岡県も、災害対策は自分たちでやることを前提としていましたが、これだけ大きな災害に見舞われると、自分たちだけではできないと言うこともはっきりしました。どう効率的に応援を受け入れ、それらの人たちが自主的に責任を持って動けるためにはどうすればいいか、それをしっかりシミュレーションしておかなければなりません。

そして、静岡県の職員、あるいは被災市町村の職員は大半を被災支援に回せるようにし、通常業務は応援部隊でこなしてもらう、と言うくらいの思い切った役割分担と権限委譲を計画しておく必要があります。というのも、同じような地震が来ても、静岡県民380万人が全員被災者になるわけではありません。おそらく8割、300万人は大きな被災をしないので、300万人分は通常業務を回さなければならないのです。それに、80万人分の巨大な規模の被災支援がのしかかってくるわけです。

同じ地震が静岡県で発生しても、今回の事例研究を深め、さらには一部反面教師にしながら、万全の対応をとれるように、先頭に立って政策立案を進めますので、どうかよろしくお願いいたします。