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ザザシティ中央館再生へ

今日の新聞で、ザザシティ中央館(厳密に言うと、運営会社と再開発組合)が新たに再生に向けた動きを進めることになったと報道されていました。

このこともあって、マスコミを含めていろんな方から連絡があったので、私なりの考えをお伝えしておきたいと思います。

まず、報道によると、ザザシティを浜松の日管さんに売却するとのことで、このことについては本当に良かったと思っています。わけのわからない会社に買い取られたのでは、また同じことの繰り返しになるからです。日管さんなら、地元にずっと貢献してこられ、信頼も実績もある企業ですので、いろんな意味で安心できます。地元企業の中で、再生に協力する会社も多く現れると思いますので、私もしっかりと応援したいと思っています。

一方で、報道の切り口については、ザザを売るとか買うとかの視点しかなく、これは残念に思っています。今回の事件の本質は、誰が買うかとか、誰に売るかということではないからです。これは、情報源がそうだからそうなってしまっているのでしょうが、あくまで「地権者の視点・発想」でしかありません。つまり、ザザシティの下の地面を持っている人が「今度は誰が私に地代を払ってくれるのか」という事だけの話であり、多くの市民にとってはどうでもいい話です。関係があるのは20人程度の地権者だけです。

そんなことより、今回の事件、というか処理スキームにより、浜松市が融資してきた7億円以上の都市開発資金が焦げ付くことになります。つまり、一連の処理に伴って、浜松市民がその処理費用の一部を負担すると言うことになるわけです。このことのほうが、行政監視の視点からも、公共の福祉の視点からも、また多くの市民が関係すると言うことからも、最も重要な視点だと思っています。

さらに皮肉なことに、その責任を今の康友市長が負わなければなりません。康友市長はザザシティの開発を強行したわけでもなく、市民の税金7億円を投入したわけでもありません。むしろ、この5年間、どう処理するかに頭を悩ませ続けてきた事でしょう。市長である以上仕方がないにせよ、この点だけはどうも腑に落ちません。

もっと言うと・・・まあどうでもいい話かもしれませんが、私は康友市長が国会議員の時から応援しているので覚えているのですが・・・ザザシティがオープンした時に康友市長は国会議員でした。でも、ザザシティのオープンには招かれていません。もちろん他の議員は招かれています。野党だったからなのか、理由は知りませんが、オープン時に招かれてもいない施設が破綻して、結果として市民負担が7億も発生して、その責任を負わなければならない。もうこれは悲劇なのか喜劇なのかもわからないような、変な話です。

いずれにしても、この件については、しっかりとした検証が必要だと考えています。これはマスコミの皆さんにもお願いしたいと思います。いったいなんだったのかを市民に伝える必要があるからです。

問題の根本は、バブルの時に立てた再開発の計画を、バブル崩壊後も強行しようとした事です。もちろんやめるタイミングはたくさんあり、私も当時は浜松の市議会議員でしたので、折に触れて反対意見を表明していました。たとえば、ザザの6階と7階に入っているこども館。私の記憶が正しければ、5階のフロアと合わせて40億(くらい。資料が手元になく記憶を頼りに書いているので、違ってればお詫びしたいと思います)の金額で浜松市が買い取っています。ちなみに、地下1階から4階までの5フロアも、同じくらいの値段です。つまり、いかに高く市、つまり市民は買い取ることになったのか。これは理由ははっきりしていて、いわゆる「裏補助金」です。補助金は規定以上出せないのですが、それでは再開発は進まない。バブル崩壊で賃料は下がり、フロアも余る。そこで、余ったフロア、余るであろうフロアを市が高く買い取ることによって、事実上の補助金としているのです。一方市民の立場からすれば、無理な再開発をバブル崩壊後も続けようとしたために、多額の税金を一部の人たちのために使われたと言うことになります。

こども館は浜松の子どものために必要な施設だ、という人もいるし、確かにそうかもしれません。しかし40億の金があれば、保育園なら50くらいは作れるし、学校の教材を充実させたり、公園の遊具を充実させたり、同じお金でいろんな事が出来ます。どちらがいいかを聞けば、一目瞭然ですね。その選択肢を議論するのが政治のはずなのですが、私も反対意見を持ちながら止められなかった当時の力の無さを恥じていますし、市長選にも落選しましたし、大きな意味でも私にも責任の一端があると思っています。

また、ザザに追加資金を投入しようとして、市議会に否決されたこともありました。私も当時の再生スキームを見ましたが、追加資金を投入したところでザザシティの経営改善、赤字体質脱却につながらないような計画、さらにはザザ当事者の負担がないのに市民負担があると言うちぐはぐな計画でしたので、その旨の意見を申しあげました。いろんな議論の末に市議会は否決したのですが、このことで逆に組合は解散できなくなり、今に至っています。市の方も議会に否決されたことで思考停止に陥り、もっと良い案、当事者も応分の負担をする案を検討し、関係者への働き掛けや公開の場での議論を進めるべきでしたのに、市議会否決を機に無関係主義に進んでいったのです。

その後、新市長が誕生し、再生に向けてかなり頭を悩まされた事と思いますが、時すでに遅く、10年前に無理を承知で再開発を強行した時のミスを取り戻す事は既に出来なくなっていました。去年あたりから債務超過に陥ったと聞いていました。また、7億円の都市開発資金の返済開始が迫ってきました。去年から、「そろそろだな・・・」と思っていたのですが、いまだに処理がなされないので「よく持つな・・・」と思っていたところでした。ですから、報道を受けても驚く事はなく、「ああ、やっときたか」と思った次第です。

ただし、これからの処理の方が大変です。まだ今は「再生のためのスタートに立った」だけです。私も中小企業診断士の端くれですので大体わかりますが、どういう形で清算するにせよ、浜松市(つまり浜松市民)を含む債権者との調整も含めて、さまざまな困難が想定されます。しかも、長引かせるとどんどん資産価値がなくなってゆく。

廃墟と化した松菱のようなビルを、その横にもう一本作るわけにはいきません。再生を目指すと言う方向性が出た以上、私も微力ながら応援したいと思っています。

いずれにしても、どこかの時点で今回の事件の検証をしっかりしなければなりませんね。10年以上もさかのぼらなければなりませんが、逆に言うとそれだけの年月、私も含めて対応が出来なかった結果、10年かけて7億円の市民のお金をドブに捨てたと言う事です。市長一人の責任にするわけにはいかないと思っています。

報道関係の皆様にも、ぜひ市民に分かるように、よく取材して分析して、報道していただきたいと思っています。このような状況になった以上、できるだけ公開の場で議論して対応するのが道理だと思いますので。