「一票の格差」0増5減と21増21減
国会が止まっています。これは、自民党が一票の格差問題に対応するとして、0増5減法案を議運にはかったことに反発したもののようです。
私もこの、衆議員の選挙制度のうち、小選挙区部分における一票の格差問題に関して、なんと「憲法違反」という裁定をされてしまいました。これまで「道路交通法違反」クラスの違反はしてきましたが、さすがに憲法違反は初めてです。一部のマスコミ等では「選挙無効かどうか」、ばかりに注目していましたが、私にすればそんなことは小さくて、日本の最高法規である憲法に違反しているとされた指摘のほうがずっと重いと思っています。選挙をやり直すかどうかは、後処理の問題であって、民主主義の根本の仕組みについて、憲法違反の指摘をされたことを重く厳しく受け止めなければなりません。
ここで、私の憲法違反の指摘、なぜそう言われたかについて少しお話しします。これは、滋賀県で一番人口の多い選挙区だからです。例えば、人口が多い40万人の選挙区から議員が一人、少ない20万人の選挙区からも一人だとすると・・・40万人の選挙区の人は、自分の思いは半分しか国政に伝わらないと。したがって、その地域の国民が損をしている。平等ではない。したがって憲法違反という理屈なんですね。滋賀1区の場合、一番小さい選挙区と比べて、1.53倍の人口があって、憲法違反ということになりました。
私としては、「他の議員の1.53倍以上働いているので、決して地域の有権者に損はさせていない!」と言いたいところですが・・・そういうことは裁判所は斟酌してくれません。やはり、一票の格差の是正のために、法改正をしなければならないのです。
そこで0増5減なのですが、これはあくまで前回の総選挙の前に自民党が主張した、緊急的対応としての定数改善案です。昨年色々な議論があった中で、任期満了が近づいたこともあって、民主党も公明党も了承し、ギリギリにこの法案を通しました。しかし肝心の区割り案を通さないまま解散となり、以前のままの選挙区で選挙をすることになったのです。
今回多くの裁判所から指摘されたとおり、この区割りの問題点は「まず各県に1つずつ定数を割り当てて47議席。残りの253議席を、人口比例で各県に割り当てる」という、いわゆる「一人別枠方式」なのです。これが違憲とされた根本の部分なのです。本来これを是正するには21増21減をしなければなりません。しかし、それでは大幅に選挙区をいじらなければならないことから、緊急的対応として0増5減が発案され、一人別枠を外した法案は通ったのですが、区割り案を通さないまま解散になったのです。
そして今、自民党がこの残った半分の法案を通そうとしたところ、民主党は「それでは根本的な解決にならないし、定数削減もしなければならない」という理屈を持ち出して反対し、ついには審議拒否をするに至りました。私もこれまで書いたとおり、確かに0増5減では本来の解決に至らないと思ってはいます。しかし、やりかけた法案を半分通したあと途中で放り出して、また新しい議論を始めるのもおかしいと思っています。簡単に言えば、民主党政権で、2個セットの商品を注文して、去年のうちに半分おさめたところで民主党が解散した。そして今年になって自民党が残りの半分を収めようとしたところ、最初に注文したはずの民主党が、『それではだめだ。残りはいらないから、新しくてもっと良いものを持ってこい、そうでなければお金は払わない』といいだしたようなものです。これはおかしいですね。
したがって私が主張しているのは、まず昨年からの合意に従って緊急措置ではあるが、0増5減はやりましょう。それから定数削減の問題や、比例のあり方の問題、さらには小選挙区か中選挙区かの議論をやりましょう。そして、今のまま小選挙区で行くとなったら、まず一人別枠方式を外した本来の姿である21増21減をやって、比例のあり方の議論をする。中選挙区ということになったら、一票の格差が出ないように選挙区割りを作り、新しい法案を通す。それがスジだ、ということです。
ほかにも定数削減の問題においては、日本の現行制度である議院内閣制では、議員の中から100人近い人たちが政府に入るので、あまり定数を下げると議会が空洞化し、与党としての役割が軽くなってしまうという問題もあります。(例えば極端な話、定数300にして、与党が170、野党が130だったとします。170の中から100人政府に入ってしまうと、残りは70人となり、衆議院の17の常任委員会の数が少なくなって、委員会審議や議会運営が進められなくなってしまいます。)
こうしたことは、選挙のパフォーマンスにしてはなりません。軽薄な議論や、感情的なアオリで決めてしまうと、結果として、日本の国力を落としてしまうことになります。冷静で落ち着いた議論を展開し日本の健全で理知的な民主主義を守ってゆかなければなりません。
私もこれまで、市議会では大選挙区制、県議会では中選挙区制、そして衆議院で小選挙区制と、すべての選挙制度を戦ってきた経験があります。こうして得た知識や経験を、しっかりとこれからの議論に生かしてゆきたいと思っています。