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派遣法を審議

今期から私が配属されることになった厚生労働委員会で、派遣法の審議が始まりました。

その初日に、トップバッターで質問に立つことになりました。派遣法はこれまで2度、廃案になっています。今回が三度目の正直になるのか、二度あることは三度あるのか、色々な意味で注目されています。

この派遣法、私はこれまでは直接審議に加わっていなかったので、一から勉強しなおして、今回の審議に臨みました。今回の派遣法改正の特長は、大きく4つです。

一つは、すべての職種について、派遣期間の制限を設け、それを3年とすること。

二つめは、派遣会社の事業許可について、すべての派遣会社を許可制にすること。

三つめは、派遣労働者について、無償・有給の教育(スキルアップ、労働の付加価値アップ)を義務付けること。

四つめは、派遣期間が終了したら、そのまま継続雇用を依頼するなど、雇用を安定させる取り組みを義務づけること。

です。

残念ながら民主党をはじめとする野党の議員さんは反発しておられますが、特に低スキル・低賃金・不安定が問題とされている派遣労働者の皆様にとっては、その課題を一つずつ克服できるような法の中身になっています。

一方で、この改正によりメリットを受けにくい方もおられます。

振り返ると、派遣法が制定され、世の中に「派遣という働き方」が出始めた当時、とりわけ女性、特に結婚をしてもう一度社会に出ようとする年代の方にとっては、当時はパートしかないような時代でした。そこに、学生時代にしっかり勉強して、あるいは社会人になってから特殊な経験を積んで、その腕を買われて派遣という仕事につければ、自由度は高く、高収入でしたので、ある意味で憧れの働き方でした。

今でもそうやって、通訳ができる秘書や、問題発生の対処ができるプログラマーなど、多くの方々が高スキル・高収入の仕事をしています。こういう方々にとっては、派遣期間を制限されることなどはマイナスになる可能性もあります。メリットとしては、教育訓練ですが、これも高スキルの場合は会社側で用意することは難しく、労働者の自主性を重視した取り組みが必要となります。

あらゆる立場の人にとってパーフェクトな法律は難しいのが現実です。しかし新しい派遣法(案)は、昨今問題となってきた、なかなか労働単価が上がらない方々、景気の波に左右され雇用が不安定になりがちな方々にとっては、現状の派遣法よりはだいぶ前進するものとなります。そういう意味で、確かに全員に完璧ではないかもしれないけど、特に問題とされた点について一歩前進させることが重要です。また課題が見つかれば、あるいは派遣労働者、派遣会社の両方に力がついてくれば、それに合わせて継続的に議論し、継続的に改善してゆく取り組みこそ、国会に求められている活動だと思っています。

また、野党の先生方からは、「この法律では実効性がない、実現の担保がない」という意見も多く聞かれます。「もっと細かく書かなければ、具体的にどうするのかわからない」という意見もあります。確かにそのように見えるかもしれませんが、そもそも法律のみで100%の実効性を担保することはできません。また、法律に、すべてのケースに対する処理の仕方を書き込むことはできません。

法律に「人を殺してはなりません」と書いても殺人はなくならないし、「スピードを出したら罰金です」と書いたら抑止されるかというと、確かに効果は出ても100%ではありません。そんなことは、多くの国民が知っています。国会で決めた法律に基づいて、私たちの政権、そして各県、各市町村で行政活動を進め、問題が見つかれば、個別の企業、個別の労働者に合わせて行政指導をし、あるいは罰則を適用し、法の目指すものに近づける努力を続けなければなりません。

そういう意味で、民主主義の政治体制をとる日本では、あらゆる課題、あらゆる政治・行政の行為について、二つの視点から議論し、国民に決めてもらう必要があります。それは、「どういう法律を定めるのか」、「法律のどこが問題なのか」という法律の中身の視点から。もう一つは、その法律を基本として、「どの政権に任せるのか」、「どの党に判断させるのか」、という政権選択・行政委任という視点。これらを一回の選挙で判断するのが、議院内閣制をとる日本の国政の特徴です。(例えばアメリカの場合は、立法の視点からの選択(議会の選挙)と、行政執行の視点からの選択(大統領の選挙)を別々に行います。)

これからも、私たちの日常活動において、法律の内容について国民の皆様からご意見をいただき、それに耳を傾けるとともに、政権として、行政執行を任される立場として、「自民党・公明党連立政権、あるいは大岡君に、行政判断を任せておけば大丈夫だ」、と言ってもらえるような信頼づくりを進めてゆきたいと思います。