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国会最終盤の安全保障法案について

国会は、テレビや新聞の報道にある通り、緊迫と混乱の度合いを増してきました。

終盤国会は多かれ少なかれ、こうなるものなのでしょうが、私も地方議員から政治の世界に入って15年になりますけれども、いろんな意味でここまで混乱したのは、見た記憶がありません。いろんな意味で、というのは、国民の間にもデマやら事実ではないことが流布されて、正しく法案をとらえて、あるいは本質をとらえての審議や批評ができない、ということも含めて、です。これは、私たちの説明不足もあるのでしょうが、全体としてのマスコミの報道の姿にも課題があるのではないでしょうか?記者の方ひとりひとり、あるいは編集や論説にかかわっている方一人一人は、それぞれ冷静で、事態をまっすぐにとらえておられるのに、なぜ全体となるとあのような姿になってしまうのか、私もわかりません。それは実は、私たち政治も同じで、議員一人一人はまともな意見なのに、党となると意味不明な姿、あるいはめちゃくちゃな行動になってしまう、ということは、自民党を含めてどこの党にもありえることです。これは、何なのかな?と思います。経済の世界のほうが、それは少ないように見えます。会社のほうが、危機感があり、危機管理がしっかりしていて、取締役会や労使の協議も含めて、団体意思の形成や確認がしっかりしているということでしょう。これは、政治としては情けないことであり、これからの政治を担う私たちに課せられた課題だと認識しています。

さて、今日は夜の10時から本会議が開かれ、私も11時ごろに、いったん宿舎に帰ってきました。参議院では、昨日から委員会運営や採決が混乱し、今日まで持ち越しました。そして今日は、野党からの問責決議案の連発で、今も参議院議員さんたちは、国会におられるようです。私たちも、夜中の1時まで衆議院本会議が延期されているので、国会は出ましたが宿舎で待機となっています。何やら非効率な気もしますが、民主主義という仕組み、議論と決議をする会議体の仕組みというのは、手続きをしっかりと踏んでいくことが大原則ですので、仕方のないことだと思っています。

国会周辺では、夜11時ごろ確認した限り、デモが続いていました。参議院が徹夜になると思うので、おそらくデモ隊も徹夜でやる考えなのでしょう。意見を表明するのは自由なので、それはやっていただければいいのですが、意見を聞いてみると、誤解されている点も多いと感じます。また、中には、安保法案の内容をほとんど知らない方もいらっしゃいます。今回のデモの動きが、法案への反対意見の表明、ということからだいぶ離れてきて、流行のようなものや、うさばらしのようなもの、60年代安保、70年代安保を思い出しながら高齢者が自分の出番を感じるようなもの、になっているのかも知れません。ただ一つ、残念に思っているのは、いま国会見学に来ている子供たちが多いのですが、その子供たちに対し不適切な声掛けをするデモ隊の大人が目立つことです。マイクを使って、「みんなー、安倍という悪い悪い総理大臣は、戦争をしたくって、戦争法案を通そうとしてるんだよ。」「戦争やって、人殺しして、お金儲けしようとしてるんだよ。」「人殺しする悪い安倍総理や悪い自民党を、許していいと思う?」「俺たちが悪い安倍を追い出して、悪い自民党を倒して、平和な日本を作るからね。」という感じで、呼びかけているのですが、これはやめてもらいたいと思います。さすがに、大人としての冷静さを欠いています。子供たちは、社会見学に来ているのであって、政治闘争に巻き込む対象ではありません。デモも意見も自由にやってもらっていいのですが、最低限のルール、常識的な節度というものは、持っていただきたいと思います。

さて、そうした流れで、いよいよ明日がピークになると思います。私たち衆議院も、明日終日、予定も入れないように、地元にも帰らないように、そして国会あるいは近隣で待機、という指示が出ていますが、参議院の混乱や遅延を考えると、土曜日までずれ込むかもしれません。ここで、なぜ審議の場が参議院に移っているのに、衆議院議員も禁足とかになるの?ということですが、これは3つの理由があります。一つは、終盤国会の常で、内閣不信任案というのが野党から提出されます。おそらく、数時間のうちに出されるでしょう。これは優先的に処理することが決められていて、つまり不信任を速やかに否決しないと、次の議事に移れないんですね。つまり、今回のような場合は、不信任の処理を済ませないと、参議院の本会議が開けない、ということですので、いつ不信任案が出されても、速やかに衆議院本会議を開いて否決できるような体制をとる、ということで延会の手続きと待機をしているということです。二つ目は、参議院の混乱が収まらない場合は、いつでも参議院の対応を否決とみなし、衆議院で再議決できるようにしておくということです。いま、衆議院は3分の2の議席を持っているので、参議院が否決あるいは結論を出さなくても、衆議院で再議決して法案を成立させることができます。私は、それは使うべきではなく、あくまで参議院が答えを出すべきだと思っていますが、それでもいつでも使えるようにしておくというのは衆議院としては重要なことですので、参議院本会議で法案が成立するまでは、衆議院は再議決の構えを崩さないようにする必要があります。これはもちろん、参議院への強力なプレッシャーでもあります。そして3つ目は、衆議院も参議院も、自民党としてチームで取り組んでいる以上、協力や共感が大事だということです。参議院が頑張っているのに、衆議院は高みの見物、というわけにはいきません。できる限りの協力が必要です。もちろん、衆議院議員が参議院側の手伝いをするには限界がありますが、それでもできることはあります。野党ももちろんそうやっていますので、与党である私たちも、同じ気持ちで、同じ思いで、この国会に取り組むべきです。チームプレーとしてやっている、というのが、三つ目の理由です。

この国会も、あと10日ほどとなりました。安保法案については、まだまだ説明が足りない、もっと説明を聞きたいという声があることは、私も承知しています。総理も国民に申し上げており、私も同意見なのですが、法案成立後も、法の目的やその運用については、しっかりと説明してゆかなければならないと思っています。実はこれは、ほかのあらゆる法律についても、国会での議論以上に、法案成立後に国民にどう説明するか、どう理解してもらうかについて、省庁や政治が力も予算も使っているというのが実情です。しかし一方で、「事後説明など意味がない。法案成立前に全国民が理解し判断できる状態でなければ民主主義とは言えない」とか、「今の政治は多数決主義であって、民主主義ではない」などの極端な意見も寄せられています。これは、日本の民主主義は代議制をとっており、国民一人一人が主権を発動できるのは、実は選挙の時だけなんですね。ほかに国民が直接主権を発動できることは、ありません。それほど選挙というのは重要であり、同時に代議制である以上、私たちは常に国民の声を聴き、多数の国民の意見、少数の国民の意見をそれぞれ聞いて、判断しています。また、多数決主義と民主主義は別の考え方ではなく、民主主義の中に多数決主義は組み込まれていて、多数決のない民主主義はありません。中国が民主化されていないというのは、多数決も、その前提となる広く国民を対象とした普通選挙も、実際には行われていないからです。国民の声、それはデモ隊の声だけでなく普通に仕事をし、普通に暮らしている人たちの声をしっかりと代議員が聞いて、そして多数決を正しく使って議論と決定を行ってゆくことこそ、民主主義の基本です。今回の安保法制も、そうした思いで国民に向かい合い、意見を聞いて、進めてきたつもりです。また、成立したから終わりではなく、むしろ始まりだと思って、国民にさらに丁寧に説明をしてゆきます。あわせて、この運用をするためには自衛隊はもとより、海保・警察などの装備の見直しや充実も必要ですので、運用を正しく効果的に進めるための議論も、これからがスタートとなります。

国会の終わりは、国民との対話の始まり。そう思いながら、戦後一番長い国会の会期末を迎えたいと思います。