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暑かったけど短かかったよね、夏の総裁選。

さてこの夏は自民党の総裁選なのですが、タイトルにも書いたとおり、私の夏は終わりました。

私はこの総裁選挙を迎えるにあたり、野田聖子さんの推薦人になっていました。さすがの私も、野田聖子さんが自民党の総裁選挙に勝てる確率は、極めて低いことはわかっています。勝てそうな候補だから乗る、という考えは、私にはあまりありません。それよりも、この総裁選挙のなかで、特に「プロセス」が、自民党のこれからを決めるうえで非常に重要だと思っているので、その場に野田さんの視点、野田さんの考え方、そして野田さんなりの議論を持ち込むべきだと確信していました。だから勝てなくても出す、という気持ちで応援をしていました。

しかし残念ながら、20人の推薦人を集めきることができず、野田さんを議論の場に送り出すことができませんでした。暑くて短い夏が終わりました。タイトルは、私の世代の人なら知っている、稲村ジェーンのセリフです。古くからの友人が激励のメールに書いてくれました。

総裁選は、今まさに盛り上がっています。各候補、それぞれの主張をされています。これこそがまさに自民党の良いところで、自由民主党という名前の通り、自由闊達な議論を行って、民主的に決めてゆく。時代の移ろいとともに政党も変わってゆかなければならないのですが、昭和の時代から見ていった時に、自民党は他党の変化よりも大きく変化してきたからこそ生き残ってきたのだと思います。いまだに党によっては代表選挙をやらない、党首選挙をやらないというところもあります。党首選挙を求めたら除名になってしまったという話も聞きます。まだまだ改革は不十分だと思いますが、それでも変化して生き残ってきた自民党の強さの秘訣は、この党首選挙によって、本当に自由闊達な議論を行って、他の候補の良い議論は丸呑みしてでも国民の期待に近い答えを出してきたことにあると思います。そこに私はぜひ、野田さんらしい議論を持ち込んでもらいたいと思っていました。

野田さんの今回のテーマは「ひと」でした。人口が増え、労働者が増え、消費者が増えていた昭和の時代から、いまや子供は減り、労働者が減り、高齢者だけが増える時代になりました。いずれ、高齢者も減り、消費者が大きく減ってゆく時代を迎えます。この人口減少社会に立ち向かっていく気概が政治にはあるのか。不都合な真実を国民に伝え、変えるべきものを変えられるかどうか。人口減少を食い止めるとともに、人口減少しても社会を維持する、その知恵はあるのか。これを国民に問いたい、というのが野田さんの出馬の理由でした。私はこの人口減少社会の緩和と適応こそ、日本が議論すべき大きなテーマだと思っています。

もはや政府のカネを他人事のようにばらまいている余裕はありません。財政再建は余裕のあるうちに始めないと、本格的な人口減少局面を迎えてからではハードランディングに近づいてしまいます。医療にしても、介護にしても、合理的な形に改革しないと、働く人が減る中で多くの人間をこの分野に割けなくなってきています。生産年齢人口が減り高齢者が増える中で、今まで通り出来高払いで行列をなす高齢者にフルスペックフルサービスの医療を提供することが持続可能なのか、国民に問わなければなりません。他の政策分野もそうです。エネルギー政策、食料政策、中小企業政策、まるで最後のバラマキ的な政策をコロナの時に展開しましたが、その反省もしつつ、昭和の発想の延長線上にあるような政策ではなく、人口減少社会に合わせて、もっと人一人一人に注目して、その付加価値に焦点を当てて、日本人全体の付加価値の合計を維持向上させるにはどの分野にどの程度力を入れるのか、大きなビジョンを民間と共有するべき時期を迎えています。

消費者、つまり国民に対しても呼びかけたいと思っていました。人口減少社会にあたり、日本の過剰サービス、タダでどこまでもサービスを求める国民性でいいのかどうか。そんなことが持続可能なのかどうか。何でもタダでサービスしてもらって当たり前、というのは、人口が増え続ける時代の発想であって、これからは社会のサービスのあり方、つまりはその一部である市役所や県庁、国のサービス対応のあり方も、抜本的に見直すべき時期を迎えているのです。そうしたこと、つまり今のように過剰なまでのサービスを求める国民性を変革しようじゃないか、みんなが意識を変えれば、社会の無駄を省いて一人一人の付加価値を上げ、つまりは給料を上げられるじゃないか、ということを呼びかけるのは、政治にしかできないことです。そうした取り組みをこの総裁選挙でやってみたいと思ったのですが、映画ではありませんが、台風とともに過ぎ去りました。

各総裁候補の皆さんは、いずれも総理総裁にふさわしい方ばかりです。ぜひ自由闊達に議論していただきたいと思います。あわせて、一つお願いができれば、国民に厳しいことも言っていただきたい。甘い話ばかり、国民の耳にハチミツを垂らすような話ばかりで、この総裁選挙を終わらせてほしくないのです。負担の話、辛抱してもらう話、リスクの話、高齢者にも現役にも子どもたちにももっと頑張ってもらわないといけない話、そうした話をすることで、より自民党に対する信頼は高まり、文字通り自民党は国民政党として、国民とともに政治を前進させられるのだと思います。

私自身もこれから、そういう視点で、もちろん強い覚悟をもって、総裁選とその先の衆議院総選挙に臨み、国民の皆様ひとりひとりからの負託にこたえたいと思っています。