台湾有事に関する高市総理の発言について
台湾有事に関する高市総理の予算委員会での発言が注目されています。 中国外務省は抗議し撤回を要求。いちいち細かいことを言う気はありませんが、首を斬るだの頭を割るだの血まみれだのと、物騒なことを発信している人もいます。 私もここ数日、報道やら一般の方々から聞かれることが多いので、私の考え方を書いておこうと思います。
結論から言うと、高市総理の発言は何ら間違ってもいないし、過激な挑発でもないし、むしろ民主主義国家のトップとして、国民に国防の現状を端的に伝え、考え方を伝え、予見可能性を示す意味で、政治家として当然の発言だと思います。したがって、撤回する必要はないし、批判されるようなことではありません。
高市総理のこの日の発言を正しく要約すると、
①台湾問題は対話によって平和裏に解決されるべき。とはっきり発言したうえで、
②存立危機事態かどうかは、その状況を総合的に見て判断する。
③仮に、台湾に武力攻撃がなされ、海上封鎖がなされ、それを解除すべく米軍が動き、その行為を妨害しようとして米軍が攻撃された場合、と明確な前提を置いて、いろんなケースが考えられるが武力の行使を伴うものであれば存立危機事態になる可能性がある。ということです。
読んでいただければわかるとおり、問題のある発言部分はありません。
特に存立危機事態の判断は、同盟国である米軍が海上封鎖の解除に動き攻撃されることを前提とし、しかも断定をしているわけではなく可能性があるとしています。日本人の中にもこれを撤回しろという方もいますが、可能性がないと言ってしまったら米国との同盟は崩壊するし、戦争を抑止する力は一気になくなります。したがって、極めて正しく国民に伝えています。
野党の方々の中にも「外交の常識がない」とか、「危機を招き入れた」とか「手の内を明かすな」とかの意見もあります。しかし、一連のやり取りを見て、外交上非常識な過激な威嚇をしているのはどちらの国なのか、明らかです。危機は抑止力が低下したときに発生するのであって、国防に関する予見性を高めることは抑止力そのものです。またこんなものは手の内とは言いません。本物の技術者は自分の技術の核心はなにかを知っています。核心以外をオープンにして参加や関心を促し、コアの部分だけを秘匿するのです。今回の総理の発言は防衛行動のコアではなく、むしろ国民に国防の現状を伝え、判断の予見性を共有する意味で、民主主義国家の防衛力を機能させるために極めて重要なことです。
最後にひとつ、重要なことをお伝えしておきたいと思います。我が国の防衛において、もっとも大きな課題は何か。それは、武器が不足していることではありません。自衛隊員のなり手が少ないことではありません。何よりも大きな課題は、日本の国民の中における、防衛意識が極めて低いことです。 2017年から2020年までに世界各国の防衛意識が調査されました。ここで、日本は79か国中ぶっちぎりの最下位でした。1位がベトナムで96.4%、中国が5位で89%、台湾77%、ロシア68%、韓国67%、フランス66%、イギリス65%、アメリカ60%、ドイツ45%と続く中、78位がリトアニアで33%、そして79位、最下位が日本で13.2%でした。なんと、下から二番目のリトアニアに3倍近い差をつけられての最下位です。 私たちの国は民主主義国家です。専制主義の国とは違い、国民に忠誠を強要したり、強制的に戦場に送り込むことはできません。いざ有事の時に、本当に防衛組織が機能するかどうかは、国民の支持に依存します。したがって普段から国民と状況や危機感を共有し、どうなったらどうするという想定をいくつも考えて予見可能性を共有しておくことこそ、いざ有事というときに国民と一体となって国家と国民を守り抜くという真の国防力につながるのです。これは、災害に対する国民の備えと似ています。政府だけで災害対応できないのと同じことです。 ですから、アメリカにおいても政治のトップのみならず、官僚たちや民間人も国防について様々な議論をし、発信をしています。他の民主主義国家でも同様です。日本だけは、なぜか防衛の議論がすくない。むしろ封じ込めている。肝心の防衛省も、仮定の質問に答えないとか、手の内を明かすことにつながるから答えないとか、国民と意識を共有しない態度に徹してきました。しかしそのことが、前述の世界最下位の防衛意識を招くことになりました。これでは、有事の時に本当にどれだけ防衛力を発揮できるか心配です。
高市総理の発言は、戦後に失ってしまった、民主主義国家のリーダーがすべての国民に国防の重要性、予見可能性、理解と協力を呼び掛ける重要な一歩になった気がします。つまるところ、国会議員や政府のもっとも重要でもっとも根源的な役割は、国と国民を守り抜くことですから。 #台湾有事 #存立危機事態 #高市総理